~著作者人格権 「名作か悪改変か」~
漫画家の芦原妃名子さんが亡くなりました。芦原さんは、日本テレビ系で昨年10月クールに放送された、連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で、死因は自殺とされています。
事件の背景は、ドラマ化にあたって芦原さんが「必ず漫画に忠実に」などの条件を出すも、脚本家、プロデューサー、出版社により反故にされた事 が直接的な原因ではないかとされています。
テレビ局や制作側による原作改変をする事は、決して珍しい話ではありません。例えば、「キテレツ大百科」、「るろうに剣心」、「ガンバの冒険」、「孤独のグルメ」、「うる星やつら」、「カバチタレ!」、「飛んで埼玉」 など、原作改変をする事によって、多くの人々に名作として記憶に残してきました。こういった原作改変を検討する事が、テレビ局や脚本家、プロデューサーなどといった制作者の仕事のひとつです。
原作改変をする事でより多くの人々に愛される作品となるものがある一方で、「海猿」、「YAWARA!」、「のだめカンタービレ」 などといった作品では、制作者側の強い圧力により原作者にとって不条理な思いを強いられた事もあり、こうした現状を日本の悪しき風習 とされています。
それでは、前者と後者の違いとはいったい何だったのでしょうか。
そこには、著作者人格権という権利の中にある、「同一性保持権」の侵害の有無に大きく関わっているかもしれません。著作者人格権とは、著作物の創作者が作品に対してもつ名誉権等の人格的利益を保護する権利を言います。公表権、氏名表示権、同一性保持権および名誉声望保持権の4つを指しています。
今回芦原さんが侵害されたとされるのは、同一性保持権という、自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で 「改変(変更・切除等)」されない権利(著作権法第20条第1項)を指しています。
原作改変によって頭を抱える原作者の多くが、この著作者人格権(同一性保持権)を侵害されトラブルとなる事が、今回の事件で注目を集めています。内容、放映時間など様々な制約によって原作改変を強いられる作品。映像化の話が出た際は、原作および原作者を尊敬してくれる制作者かどうか、見極める事も、原作者の仕事かもしれません。