お母さんは生物学者〜ママの読み聞かせ生き物千一夜物語~

【第24回】解析例3のうち、扁平上皮がんで多く発現している遺伝子

こんにちは!
第22回(解析例3)では、肺がんのタイプ別に多く発現している遺伝子を探し出したお話をしました。今回はその中から、扁平上皮がんで多く発現している遺伝子についてお話しします。

肺の扁平上皮がんの細胞株の約30%で共通して多く発現している52個の遺伝子は、肺以外の器官ではどうなっているのでしょう?
『F-ExpCells』の発現データで調べたところ、この52個の遺伝子は肺のほか、頭頸部や食道などの扁平上皮がんの細胞株でも多く発現していました。さらに、人の組織の発現データ(『F-ExpTissues』)でも調べたところ、頭頸部、食道、子宮頸部、皮膚などの扁平上皮がんや、尿路上皮がんで多く発現していました。また、この52個の遺伝子の一部は、正常食道、正常皮膚などでも多く発現していました。

実はこの52個の遺伝子の中には、扁平上皮細胞の目印(マーカー)として知られる「p63」も含まれていました。このことから、この52個の遺伝子が扁平上皮に特徴的な遺伝子であると考えられます。

そして、肺の扁平上皮がんの細胞株の中で、この52個の遺伝子が多く発現している約30%の細胞株が、より典型的な扁平上皮がんの性質をもっていると考えてもいいのではないかと思います。逆に、残りの約70%の細胞株は、典型的な扁平上皮がんとは少し異なる性質をもっているのかもしれません。もし研究で肺の扁平上皮がんの細胞株を使いたいのであれば、扁平上皮らしさが強い細胞株を選んだほうが、目的に合った実験ができるのではないかと思います。

抗がん剤の中には、扁平上皮がんでは出血性リスクのために使用できないものや、腺がんには効果があっても扁平上皮がんには効果がないものがあります。非小細胞がんの中で扁平上皮がんと非扁平上皮がんを区別することは治療上も重要になってきていますので、扁平上皮がんに特徴的な遺伝子の情報は有用だと思われます。

肺がん細胞株の解析例のお話は今回で終了です。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。遺伝子発現データセット『F-ExpCells』に興味を持っていただけたなら、とてもうれしいです。

次回からは、血液疾患の細胞株を題材にした解析例をご紹介していく予定です。準備の都合で公開まで少しお時間をいただく場合もありますが、新しいテーマを楽しみにしていただければ幸いです。

<第23回