こんにちは!
前回、遺伝子の発現異常もがんの原因になるというお話をしました。がんの原因となる遺伝子の発現異常を見つけるには、DNAマイクロアレイを使うととても便利です。今回はDNAマイクロアレイについてお話します。
DNAマイクロアレイの実験では、約1万個以上の小さなスポットに異なる遺伝子のDNA断片(プローブ)がくっついているスライドガラスを使います。
実験は次のような手順で行います。①発現を比べたい2つの細胞、例えばがん細胞と正常細胞からRNAを取り出し、同じ量のRNA液を用意します。②それぞれのRNA液にDNA合成に必要な試薬を加えて、RNAの塩基配列に相補的な配列のcDNA(相補的DNA)を合成します。その時にがん細胞のcDNAには赤い色をつけます。正常細胞のcDNAには緑の色をつけます。③両方のcDNAを混ぜた液をスライドガラスにのせ、しばらく待ちます。④余分な液を洗い流し、スライドガラス上のスポットが何色になったのかを調べます。
塩基には相補性があるので、スライドガラス上のDNA断片と相補的な配列をもつcDNAは結合します。もしがん細胞だけで発現している遺伝子があれば、その遺伝子のスポットは赤色になります。正常細胞だけで発現している遺伝子があれば、その遺伝子のスポットは緑色になります。がん細胞と正常細胞で同じくらい発現している遺伝子があれば、その遺伝子のスポットは黄色になります。正常細胞と比べてがん細胞で発現が多ければ多いほどより濃い赤い色のスポットに、がん細胞で発現が少なければ少ないほどより濃い緑色のスポットになるので、スポットの色を見れば2つの細胞の遺伝子の発現の違いがわかります。遺伝子発現解析では色の状態を数値に変換して解析しています。

今回は2つの細胞のうち1つは正常細胞を、もう1つはがん細胞を使って実験し、正常細胞とがん細胞の発現を直接比べるやり方を説明しましたが、すべての実験で同じRNAを片方に使えば、すべての実験が同じRNAと比べた結果となります。このようにすることで、複数のサンプルの遺伝子の発現を並べて比べることができるのです。「1.標的分子探索を加速する~遺伝子発現データベース活用のすすめ~」で示したデータは、まさにこのDNAマイクロアレイで取得して並べて比べたものになります。
次回は、がんのタイプについてお話します。