こんにちは!
前回、がんには様々なタイプがあるというお話をしました。今回はがんのタイプの診断方法についてお話します。
がんのタイプの診断には、患者さんから採取した組織や細胞の形を顕微鏡で調べる方法がよく使われています。この方法を「病理診断」といいます。顕微鏡で組織や細胞の形を見て正常細胞との違いを探し、どのようながんなのかを診断するのですが、正常な細胞からがん細胞への変化の途中段階の細胞もあるので、診断が難しい場合もあります。また、がんには様々なタイプがあるうえに、一人の患者さんのがんにいくつかのタイプのがんが混ざっている場合もあるので、それらを見分けるのも大変です。そこで、病理診断では様々なタイプのがんに特徴的なタンパク質に色をつける作業をし、そのタンパク質があるかどうかを調べて最終的にどのタイプのがんかを診断する「免疫染色」という方法も使われています。それでも診断に迷うケースや、診断を行うお医者さんの間で意見が異なるケースも稀にあるようです。
もっと簡単にがんのタイプを診断できる方法があったら、病理診断と合わせてその方法を用いることで、より確実な診断ができるようになると思います。そんな方法をみつけるために、DNAマイクロアレイを使った遺伝子発現解析が利用できるのではないでしょうか。
●福島県立医科大学の網羅的遺伝子発現データ(F-Expシリーズ)
https://ftrf.jp/gene-expression/
様々なタイプのがんで遺伝子発現を比べてみれば、それぞれのタイプのがんに関係する遺伝子を明らかにすることができます。そうしたら、それらの遺伝子が、がんのタイプの診断に使える可能性があります。さらに、それらの遺伝子がそれぞれのタイプに適したあたらしい治療薬を開発するためのヒントにもなります。DNAマイクロアレイを使った遺伝子発現解析は、これまでに見つかっていなかったがんに関係する遺伝子を新たに見つけるツールになると思います。
次回は、細胞株についてお話します。