こんにちは!
今回は細胞株についてお話します。
がんの研究をするのに欠かせない材料に細胞株があります。がんの研究に人の体を使うことはできません。そこで人の体の代わりに使うのが細胞株です。細胞株は、がんの患者さんから採取したがん細胞を人工的な環境で増やした細胞のことです。細胞を増やすことを培養するといいます。
がんの研究に細胞株を使うと様々なメリットがあります。細胞株はいつでも増やすことができるので継続的な研究ができます。また、同時に多くの実験をすることもできます。培養する時に薬剤を加えることで、薬剤が細胞に与える影響を調べることもできます。細胞株は培養条件を同じにすれば、育てた細胞がいつでも同じ性質をもつため、実験結果がいつも同じになります。他の人が実験をしても同じ結果が得られます。つまり、再現性の高い結果が得られるのです。また、患者さんの体にできたがんは、タイプが1つのがんの場合もありますが、いくつかのタイプが混ざった混合型のがんである場合もあり、研究に使うにはとても複雑です。けれども、細胞株の場合は由来がはっきりとわかっているので、がんのタイプの性質を調べるのに適していると考えられます。
ただし、細胞株は生育環境が生体内とは異なるため、本来のがんと完全に同一ではない点には気をつける必要があります。そのため、細胞株の研究結果をそのまま患者さんに適用することは難しいですが、がんの基礎研究をするうえでは細胞株を使った実験は非常に重要です。
私たちの研究室ではDNAマイクロアレイで取得した、1,022種類の細胞株x14,400プローブの遺伝子発現データのセット(商品名:F-ExpCells)を提供しています。是非がんの基礎研究にご活用下さい。
●網羅的遺伝子発現解析データ(F-Expシリーズ)について
次回は、『F-ExpCells』を使用した解析例について、ご紹介させていただきます。