お母さんは生物学者〜ママの読み聞かせ生き物千一夜物語~

【第1回】 ごあいさつ

こんにちは!福島県立医科大学TRセンターの研究員Yです。一児の母です。DNAマイクロアレイを用いて、患者さん由来の組織や細胞株の遺伝子発現データを取得し、解析する仕事をしています。研究室のメンバーとともにDNAマイクロアレイの実験をすること約20年。膨大な数の発現データが集まりました。せっかく集めたデータを自分たちだけで使っていては、あまりにももったいない!そこで、より多くの医療関係者や科学研究に携わる皆様にご活用いただけるよう、遺伝子発現データを有償で提供することにいたしました。

少ない数のデータでは十分な傾向や結論を得るのは難しいですが、数多くのデータが集まることで、それまで見えなかった傾向や意味が明らかになってきます。例えば、私たちが集めた膨大な数のがんの発現データからは、がんの性質を反映する違いが明確に見えてきます。さらに、その違いが特定のがんだけで見られるものなのか、他のがんでも見られるものなのかもわかります。同じ性質のがんが他にもあることがわかれば、それらのがんに同じ治療薬を使える可能性が広がります。私たちが提供している発現データを皆様にご活用いただくことで、がんの新たな診断方法や治療薬の開発が進み、個別化医療がさらに発展することを願っています。

次回より、連載形式で私が取り組んできたがんの遺伝子発現解析についてご紹介します。この分野になじみのない方にもご理解いただけるよう、生物学の基礎からわかりやすくお話しする予定です。この機会に、がんの発現データから見えてくる世界を知り、発現データへの関心を深めていただけたら幸いです。少しの間、どうぞお付き合いください。

次回は、細胞についてお話します。

福島県立医科大学の遺伝子発現データはこちら

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