お母さんは生物学者〜ママの読み聞かせ生き物千一夜物語~

【第15回】解析例1 :『F-ExpCells』を使用した肺がん細胞株のクラスタ解析

こんにちは!

少し前に、肺がんには「小細胞がん」とそれ以外の「非小細胞がん」の2つのタイプがあるというお話をしました。非小細胞がんは進行がゆっくりですが、小細胞がんは進行がとても速くて、転移や再発もしやすい性質を持っています。この2つのタイプは違う治療をするので、患者さんのがんがどちらのタイプのがんなのかを見極めることはとても重要です。そこで今回は、肺がんの小細胞がんと非小細胞がんを区別する遺伝子があるのかということについて、『F-ExpCells』の発現データを使って調べてみました。

『F-ExpCells』の発現データには193個の肺がん細胞株の発現データが含まれています。その中の71個が小細胞がんの細胞株です。残りの122個は非小細胞がんの細胞株です。

まず、『F-ExpCells』の発現データから、この193個の肺がん細胞株の発現データを抜き出しました。次に、DNAマイクロアレイに搭載している14,400個の遺伝子のうち、細胞株によって発現が大きく異なる約2,700個の遺伝子を選び、その発現データを用いてクラスタ解析を行いました。クラスタ解析というのは、似た者同士でグループ分けをする方法です。その結果、肺がん細胞株を2つのグループに分けることができました。1つは主に小細胞がんからなるグループでした。もう1つは主に非小細胞がんからなるグループでした。小細胞がんのグループには小細胞がんの約90%が含まれました。

今回の解析結果から、遺伝子発現データで小細胞がんと非小細胞がんの区別ができるということ、そして小細胞がんと非小細胞がんを区別する遺伝子が実際にあるということがわかりました。遺伝子発現データをさらに細かく調べていけば、具体的にどんな遺伝子が小細胞がんで多く発現しているのかということも明らかにすることができます。

次回は、肺がんの分類について、もう少し詳しくお話します。

●網羅的遺伝子発現解析データ(F-Expシリーズ)について

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