AIとの対話で見出した、腫瘍内免疫を読み解く『11のものさし』
前回は、「兵士の総数」の前編として、腫瘍内にどれくらい免疫細胞が集まっているのかを、PTPRCの発現から見てみました。
今回はその後編として、主力部隊であるT細胞がどれくらい存在するのかを見ていきます。
『F-ExpTissues』の図については、前回同様、各遺伝子の発現をヒートマップとグラフで示します。サンプルカテゴリと原発組織の色分けは、以下の通りです。

■「主力部隊」を特定する: CD3(CD3D・CD3E・CD3G)
免疫細胞が集まっていても、その中に実際にがんに対処する主力部隊であるT細胞が十分に存在しなければ、治療効果は期待しにくくなります。そこで、腫瘍にどのくらいT細胞が入り込んでいるかを見てみます。
CD3はT細胞が共通して持つ代表的な目印です。
CD3D・CD3EはT細胞で安定して強く発現し、T細胞の存在を示す指標として広く利用されています。
CD3GもT細胞で発現が見られますが、発現量はやや低めで、解析手法によっては弱いシグナルとして広く検出されるなど、見え方に違いが生じることがあります。
T細胞の存在をより確実に把握するには、CD3D・CD3Eを中心に、CD3Gを含めて複数のマーカーを組み合わせて評価することが望ましいです。

CD3D・CD3Eは、正常胸腺やリンパ節といった免疫細胞が豊富な組織で発現が確認され、血液でも同様に発現が見られました。さらに、胸腺腫やTリンパ芽急性白血病/リンパ腫などのT細胞性腫瘍では高い発現が認められ、一部の悪性リンパ腫でも発現が確認されました。
一方で、悪性腫瘍(固形がん)では、発現が見られるサンプルはそれほど多くはありませんでした。
CD3Gも全体としては同様の傾向を示しましたが、CD3D・CD3Eと比べると、より多くのサンプルで発現が見られました。
CD3Gはもともと発現量が低めの遺伝子であり、マイクロアレイではごく弱いシグナルや背景のノイズも拾いやすいとされています。そのため、幅広いサンプルで「少し発現している」ように見える場合があると考えられます。
■大規模データだからこそ見える”がん全体の姿“
サンプルごとに見るとT細胞が入り込んでいる腫瘍もありますが、約1万という膨大なデータを俯瞰してみると、T細胞が入り込んでいる腫瘍は実はそれほど多くないように感じられました。
大規模データだからこそ見えてくる、がん全体の姿がここにあります。
※補足: TRACについて
本来はTRACという遺伝子もT細胞を確定する大切な指標なのですが、使用したマイクロアレイには搭載されていませんでした。
そのため、この解析では、CD3の発現を手がかりにT細胞の存在量を見ています。







