『11のものさし』

【第2回】 兵士の総量

AIとの対話で見出した、腫瘍内免疫を読み解く『11のものさし』

前回は、腫瘍内免疫の状態を読み解くための『11のものさし』の全体像をご紹介しました。

その1つ目である「兵士の総数」は、腫瘍に集まる免疫細胞全体(=兵士)の量と、その中に含まれる主力部隊であるT細胞の量という、2つの側面から捉えることができます。
今回はその前編として、腫瘍にどれくらい免疫細胞が集まっているのかに注目します。

この点を確かめるために、約1万サンプルからなる発現データ『F-ExpTissues』を使い、免疫細胞全体の存在量を示す「目印(遺伝子)」の発現を見ていきます。

■『F-ExpTissues』の発現データの見方について

このシリーズでは、各遺伝子の発現をヒートマップとグラフで示します。
図は上から順に、カラーバー(サンプルカテゴリと原発組織)、ヒートマップ、グラフの構成になっています。

・カラーバー: サンプルカテゴリと原発組織の色分けは、以下の通りです。

・ヒートマップ: 赤が濃いほど発現が高く、青が濃いほど発現が低いことを表しています。
・グラフ: ヒートマップだけでは分かりにくい発現値の細かな違いを、棒の高さで見やすくしたものです。

■「兵士全体」の数を知る: PTPRC(CD45)

PTPRC(CD45)は白血球全体の目印です。
ここでは、腫瘍組織の中にどの程度の免疫細胞が存在しているかを、種類を問わず大まかに捉えます。
この免疫細胞の中には、後編で扱う“主力部隊”であるT細胞も含まれています。

発現パターンを見ると、造血系腫瘍や血液サンプルでは一貫して高い発現が確認されました。また、正常組織でもリンパ節や脾臓、肺など免疫細胞が多い組織では高めの発現が見られ、生物学的にも妥当な分布を示しています。
一方、悪性腫瘍(固形がん)では発現がやや高いサンプルと低いサンプルが混在し、全体としては低めのサンプルが多いように見えました。

今回は、腫瘍にどれくらい免疫細胞が入り込んでいるのかを、PTPRCの発現から大まかに捉えてみました。

次回は、「兵士の総数」の後編として、主力部隊であるT細胞に注目し、その存在を示すCD3の発現を見ていきます。

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