AIとの対話で見出した、腫瘍内免疫を読み解く『11のものさし』
腫瘍内で免疫がどのように働いているかは、治療効果や腫瘍の性質を理解する上で欠かせない視点です。しかし、腫瘍内の環境は非常に複雑で、単一の指標だけで全体像を把握することは容易ではありません。
「腫瘍に免疫細胞はどれくらい集まっているのか」
「免疫細胞はどんな武器を持っているのか」
「免疫活動を妨げている要因はどこにあるのか」
AIとの対話を重ねる中で、こうした疑問に答えられるかもしれない『11のものさし』が形になりました。
この『11のものさし』は、DNAマイクロアレイで得られた、それぞれ5個前後の遺伝子の発現レベルを手がかりに、腫瘍内免疫の特徴を読み解いていくためのものです。
今回は、この『11のものさし』の全体像をご紹介します。
腫瘍にどれくらい免疫細胞(兵士)が集まっているか、そしてその中でも主力部隊であるT細胞がどれくらい存在するかを把握します。
② 部隊の「構成」
集まったT細胞が、司令塔タイプ(CD4系)なのか、実働部隊(CD8系)なのか、そのバランスを確認します。
③ ブレーキの「強さ」
免疫の行き過ぎを抑える制御性T細胞(Treg)が、どれくらい働いているかを読み取ります。Tregの特徴が強い場合、がんへの攻撃が弱まってしまうことがあります。
④ 攻撃の「勢い」
がんを攻撃する部隊(主にCD8 T細胞)が、どれくらい攻撃モードにはいりつつあるかを評価します。
⑤ 戦い方の「バリエーション」
攻撃部隊(主にCD8 T細胞)の中に、異なる戦い方をするサブグループがどれくらい存在するか、その多様性を見ます。
⑥ 独立部隊「NK細胞」
特定の指示を待たずに動ける精鋭、ナチュラルキラー(NK)細胞の量と活性状態を確認します。
⑦ 援護の「体制」
抗体を作ったり周囲を助けたりする「B細胞」が、現場でどれくらいサポート体制を築けているかを見ます。
⑧ サポート役の「姿勢」
ミエロイド細胞が、攻撃を応援するモード(M1)なのか、逆に免疫抑制寄り(M2)なのか、その傾向を判定します。
⑨ 影響の「方向性」
炎症をつくり出したり、免疫の働きを調整したりする好中球系の細胞が、腫瘍環境にどのような方向性で影響しているかを確認します。
⑩ 敵の「見えやすさ」
がん細胞が「自分は敵だ」という目印(抗原)を、きちんと外に向けて提示できているかを確認します。この目印が弱いと、免疫細胞は敵を見つけることができません。
⑪ 兵士の「疲れ」と「バリア」
戦いが長引いて兵士たちが「疲弊」していないか、あるいはがん細胞が免疫チェックポイント分子を利用して“バリア”を張っていないかを確認します。
『11のものさし』の遺伝子の発現をサンプルごとに見ていくことは、患者さんごとの免疫環境の大まかな傾向をつかむ手がかりになります。
しかし今回は、約1万サンプルからなる発現データセット『F-ExpTissues』を用い、各遺伝子がさまざまな組織や腫瘍でどのように発現しているのかを“横断的”に見るというアプローチを取ります。大規模データを用いることで、がん全体としてどのような免疫の傾向が見えてくるのかを知りたいと思ったからです。
この『11のものさし』にどのような遺伝子が含まれているのか、
次回から遺伝子セットを1つずつ取り上げ、順にご紹介していきます。
実際の遺伝子発現データから見えてくる腫瘍内免疫の世界を、 AIの力も借りながら、できるだけ分かりやすく整理してお届けします。









